八牧浩行 2016年9月2日(金) 3時0分
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中国の最近の台頭により、戦後の米国中心の国際秩序が大きく揺らいでいる。宮本雄二元駐中国大使は、米中関係について「二重三重に絡みあっている」と強調、日本にとって米国も安心できないとの認識を示した。写真は会見する宮本氏。
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中国の最近の台頭により、戦後の米国中心の国際秩序が大きく揺らいでいる。五百旗頭(いおきべ)真アジア調査会会長・熊本県立大学理事長(前防衛大学校長)、宮本雄二元駐中国大使、川島真東京大学教授が、「中国とどうつきあうか―日米中のこれから」をテーマに、日本記者クラブでこのほど会見した。
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宮本雄二元駐中国大使は、大きく台頭した中国は米国に取って代わるかどうか自身でも分からず迷走していると指摘した上で、自信を喪失した米国は「中国を国際秩序に誘導できない」と分析。その上で、「中国人は米国に負けないように強い国家にしなければならないと考えているが、どうもっていくのか先がはっきりしない」と懸念、東アジアにおいて協調的な秩序構築が求められるとした。また米中関係について「二重三重に絡みあっている」と強調、日本にとって米国も安心できないとの認識を示した。
宮本氏の発言は次の通り。
かつて輝いていた米国が自信を喪失している。黒人、女性などマイノリティの権利が認められた結果、メインストリーム(主流)を行く人たちが不満を抱き、全体のバランスが失われている。その結果、民主主義そのものも打撃を受けている。
米国は普通の国ではなく、移民によって形成された「ミニ地球」とでもいうべき国である。リベラル・デモクラシーを基軸とする国際秩序を守る「覚悟」が求められる。(米国が本気で取り組めば)国際秩序はそう簡単に崩れない。
中国は「特色のある社会主義」と「伝統のある中国」の2つの考えを持っている。さらにアヘン戦争以来の列強に侵略された屈辱の歴史を消したいとの思いが強い。
昔ナンバーワン国家だったので、いずれ米国を凌駕すると大部分の中国人が思っている。米国に負けないように強い国家にしなければならないと考えているが、どうもっていくのか先がはっきりしない。
過去の屈辱の歴史を繰り返さないよう、強くなければならないという思いがあるので、軍事力増強に力を入れている。しかしどのような東アジアをつくるのか。中国国内では(1)国際協調する中で発展を目指す(2)力を持つに至った今日、中国の正しい主張を全面に打ち出す―の2つの考えがせめぎ合っている状態だ。中国の中で国際協調的なものが主流になってもらわないと面倒なことになる。東アジアについて協調的な秩序構築が求められる。
このままいけば中国の軍事力は増え続ける。(独善的な)考えを変えてもらわなければならないが、大国になった以上、「中国の考えは正しいので尊重されるべきだ」という認識を抱いている。
国際秩序を長期的に守っていく考え方を持ってもらわなければならない。同時に、対話を強化して、考え方を協調的なものに変えてもらう必要がある。国際秩序は簡単には崩れないことを認識させ、国際協調路線を歩むように、中国の考えを誘導すべきである。
中国は国際的に追い込まれているという認識が日本人の間にあるが、追い込まれてはいない。客観的に見て、米中関係は二重三重に(密接に)絡みあっており、(互いに)手を打っている。(日本にとって)米国も安心できない。日米関係は弱くなっているので努力していく必要がある。
国際秩序を守る側は守らなければならない。壊せば無秩序になってしまう。弱肉強食の時代にしてはいけない。米国の覚悟にかかっており、米国が頑張ってくれないと困る。
東アジアにどのような秩序をつくろうとしているのか。議論をしていく必要がある。「法の支配」の概念は有効である。中国も法律を定めて末端までこの概念を浸透させなければならないと推進している。この面では日本が先導していく必要がある。
日中間の議員外交が盛んだったが、最近は日本側にパイプを持つ議員が激減している。ニ階俊博幹事長は例外だが、中国に関心を持つ議員も減っている。議員外交や民間外交は重要である。(八牧浩行)
<続く>
■筆者プロフィール:八牧浩行
1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。
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