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遣隋使以来の日中交流、「筆談」によって発展=西洋文字にはない「漢字」の効用とは?―「国際交流基金賞」受賞の王勇教授が講演

八牧浩行    2015年11月2日(月) 19時5分

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「国際交流基金賞」を受賞した王勇・浙江工商大学教授が、「此の時、声無きは声有るに勝る―東洋的文化交流のスタイル」と題して講演。漢字という視覚コミュニケーション文字を媒介した東アジアの筆談の特徴と遣隋使以来の日中交流の歴史を語った。

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2015年10月22日、学術、芸術その他の文化活動を通じて国際友好親善の促進に貢献した個人・団体を顕彰する「国際交流基金賞」を受賞した王勇・浙江工商大学東亜研究院院長・教授が東京都内の国際交流基金ビルで、「此の時、声無きは声有るに勝る―東洋的文化交流のスタイル」と題して講演。漢字という視覚コミュニケーション文字を媒介した東アジアの筆談の特徴と遣隋使以来の日中交流の歴史を語った。講演要旨は次の通り。

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唐の詩人・王維は中国と陸続きである西域の間に存在する地理的な近さと心理的な遠さを「送別詩」で詠ったが、一方で、奈良時代に遣唐使として中国に渡った阿倍仲麻呂への別れの詩の中で、中国と日本との間にある地理的な遠さと心理的な近さを指摘した。日本の遣隋使、遣唐使が中国から多くの書物を持ち帰った。そこで私は、中国から日本に至る道をシルクロードではない「ブックロード」と名付けた。

日本と中国の文化交流の典型は「筆談」である。飛鳥時代に遣隋使として中国に渡った小野妹子をはじめ、千年以上におよぶ中日交流の歴史の中で、筆談は数多く行われた。詩など文学的なコミュニケーションを交わすために、筆談が用いられたことも多かった。結果的に交流の実態を記録し保存することにもつながった。

筆談は、種子島への鉄砲伝来の際に、ポルトガル人に同行していた中国人との間でも使われた。筆談がなかったら戦争になっていたかもしれない。筆談は近代になっても続き、1871年の日清修好条規でも使われた。筆談は、朝鮮と日本、ベトナムと日本、琉球と日本、琉球と福建、琉球と台湾でも使用され記録も残されている。方言の違いが大きい中国人同士でも筆談が用いられた。日本に留学した孫文周恩来と日本人学生とのコミュニケーションも筆談だった。

東洋人の共通認識として、(1)音声は聴覚で捉えるものであり、時間とともに消える、(2)文字は視覚で捉えるものであり、時間的には古今を通じて伝承する―というもので、東洋人は文字を重んじる。筆談は東アジア諸国間のコミュニケーション方法であり、「通訳を介しては深い話はできず、スムーズなコミュニケーションも不可能」として、重要な事柄は多く筆話を用いようと考えていた人たちが多かった。

筆談は、音声の違いが妨げる交流の壁を突き破る方法だが、漢字の持つ特徴によるところが大きい。漢字なら、音読できない文字でも目で見ると意味を理解でき、読めなければ書けない西洋言語では考えられないことだ。東洋人は、何百・何千もの複雑な図形のような文字を解読し、しかもそれぞれの字の微妙な差異までも区別し、自由に操ることができる。(八牧浩行

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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