日本人留学生に誘われた旅行、「誘拐されるんじゃないか」と警戒しながら付いていった結果―中国人学生

日本僑報社    2015年8月17日(月) 9時15分

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理解不足から固定観念で相手を判断してしまうことは、人間関係においてよくあることだ。多くの中国人がそうであるように、吉林大学の孫勝広さんも日本人留学生と戦時中の日本兵のイメージを重ね合わせて見てしまったようだ。写真はリュックサック。

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理解不足から固定観念で相手を判断してしまうことは、人間関係においてよくあることだ。多くの中国人がそうであるように、吉林大学の孫勝広さんも日本人留学生と戦時中の日本兵のイメージを重ね合わせて見てしまったようだ。

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「日本人はこわい…」。こんな言葉を聞いたら、どんな感じがするでしょう。

1億3000万の日本人をひと言で表現することはできません。しかし、以前の私はこう考えていたんです。日本人というと、思わず日中戦争のことが頭の中に浮かんできました。ふるさとの村の老人が話してくれた当時の苦しかった生活。村に残っている戦争の傷跡。ドキュメンタリー番組でしばしば見かける日本軍の残虐さ。中でも、日本軍の兵士が刀を振り回してニヤリと笑うのが一番印象的でした。その顔は目に焼きついて離れませんでした。

大学では、毎週1回日本語コーナーがあります。ここでは、日本人留学生と中国人学生が日本語で語り合います。そこへ60歳の日本人留学生が来ました。この歳で外国に留学に来たことに、私は感心しました。ですが、顔を見るとあの日本軍の兵士のことを思い出してしまい、「気をつけなくちゃ」と思っていました。

初めて彼と会ってから4カ月。夏休みになったある日、私の部屋に電話がかかってきました。意外なことに、その日本人からでした。

「孫くん、夏休み、ひま?」

「別に用事はないですけど」

「じゃあ、一緒に旅行でもどう?」

私は、「ちょっと考えます」と言って、すぐには承知しませんでした。友達は「いいじゃない」と言ってくれましたが、そのときは、誘拐されるのではないかという心配さえありました。結局、「子どもじゃあるまいし」と自分に言い聞かせて、行くことに決めました。ちょっと警戒してはいましたけど。

旅行中、通訳兼ガイドとしていろんな所を案内したことで、彼との距離が縮まった気がしました。それでも、自分の心の中に引かれた国境線を踏み越える勇気は持てませんでした。そんなある日、ホテルで一緒にニュースを見ました。中国のチチハルに残された化学兵器の被害者についてのニュースでした。私は言葉にならない気持ちで、そのニュースに見入っていました。ふと隣を見ると、彼もじっと画面を見つめていました。そして、真剣な顔で「この人たち、大丈夫かな」とつぶやいたのです。私は大変驚かされました。「あなたは日本人じゃないですか」と聞いたら、「それは関係ないよ。日本人もいろいろな人がいるから。戦争の被害は悲惨じゃないか」と答えました。

「あ、そうか、彼も戦争の被害に関心を持っているのか」。それまで彼に抱いていた不信感が消えてしまいました。国境線を一歩踏み越えた自分を感じました。「先入観を持つな」。これは極めて常識的な意見ですが、そのことに本当に気づかされる出会いに恵まれたことは奇跡だと感じています。あえて、私は主張します。先入観を持たないで、心の扉を開けてみませんか。(編集/北田

※本文は、第一回中国人の日本語作文コンクール受賞作品集「日中友好への提言2005」(段躍中編、日本僑報社、2005年)より、孫勝広さん(吉林大学)の作品「心の扉を開けて」を編集したものです。文中の表現は基本的に原文のまま記載しています。なお、作文は日本僑報社の許可を得て掲載しています。

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